オルタード・カーボン

久々のレビュー。

オルタード・カーボン

オルタード・カーボン

PKD賞受賞作。人格のデジタル化により不老不死が実現し、犯罪者は精神だけが拘束され、肉体が売られる27世紀。主人公の私立探偵が殺された大富豪自身の依頼を受けて調査に乗り出す。
なんというか、良作ではあるのだが、この小説の面白さというのはSFとしていうよりもハードボイルド小説としてのもの。ハードボイルド小説としての出来はどうかは判断しがたいが、作者はSF的な設定をストーリーを展開するための舞台装置としか使っておらず、デジタル化された人間のアイデンティティの問題といったことについてはほとんど触れていないことがSFとして物足りないところ。
しかし、設定を生かした社会状況やミステリーとしてのプロットはしっかりしていてる。エンターテイメントとして楽しみたい人にはいい作品だろう。ただし、殺し屋とジャンキー、売春婦が出てくる小説が嫌いな方にはお勧めできないが。