レインボーズ・エンド

レインボーズ・エンド上 (創元SF文庫)

レインボーズ・エンド上 (創元SF文庫)

レインボーズ・エンド下 (創元SF文庫)

レインボーズ・エンド下 (創元SF文庫)

ヴァーナー・ヴィンジの最新作

プロローグでは、近未来において人間を洗脳するウィルスが開発されていることが述べられ、国際謀略ものかと思っていたら、次からは一転、アルツハイマーが治った老人の生涯学習についての話が延々と展開される。もっとも、ここからその国際的な陰謀に繋がっていくんだが、「遠き神々の炎〈上〉 (創元SF文庫)遠き神々の炎〈下〉 (創元SF文庫)」などを読んでいるとスケールの小ささに半ば愕然とする。けれども、そこはさすがヴィンジといったところで、AR(拡張現実)によって実現された日常を余す所無く魅力的に描いている。主人公がアルツハイマーの老人というのも、急速に発達する技術の中で既存の知識が役に立たなくなる悲哀を描くという意味において最適であるといえる。
ヴィンジというと技術的特異点(シンギュラリティ)の提唱者として知られている。シンギュラリティというと、シンギュラリティ後の世界を描いたスペオペ作品群があるが、あれらは結局シンギュラリティそのものについてはあまり述べておらず、結局取り残された人々の話であったりする。その点から言うと、この作品はシンギュラリティ前夜の世界とシンギュラリティに向かう個人をはっきりと描ききっており、さすが提唱者と言えるだろう。

藤田和日郎魂

画業20周年記念全集 藤田和日郎魂 DVDつき (原画集・イラストブック)

画業20周年記念全集 藤田和日郎魂 DVDつき (原画集・イラストブック)

遅くなったけど、買った。
すごい豪華な内容。単なる画集ではなく、本当に集大成というしかない。あと、「からくりの君*1」のDVDがついているのもポイント。
でも、雷句誠のコメントはやっぱりなかった。残念。

*1:からくりサーカスの元になった作品の一つ。「虎乱。」

進化の設計者

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

進化の設計者
タイトルがこうなっているが、進化論よりは気象予測やメガフロートなどが目立ち、れっきとした海洋SFである。
この作者は林譲治であるので、当然ながらウェアラブルコンピューターが登場するが、「AADDシリーズ」とは違い、現代の延長としての未来を描いているため、技術と社会に関する林譲治の考察が一層現実味を帯びてくるので楽しめる。
林譲治の作品では思想的対立関係にある二者の立場が描かれることが多いのだが、主人公側が極めて冷静に論理的に行動している様が描かれる一方、相手側の描写が少なく、主張が弱いに思え、理解を示しづらいことが多々ある。今回の作品でも敵対する優生学思想集団「ユーレカ」の描写が少ないせいか、その一員が主張を述べるシーンが電波がかっているように見えたりする。まあ、仕方ないといえば仕方ないんだけど。

真・女立喰師列伝

SF研の先輩とその友人に誘われて、真・女立喰師列伝を見に行った。
押井守の実写はいままで見ていなかったので、ついていけるかと思っていたんだが、「クレープのマミ」で小倉優子があんな台詞を言うシーンを見たらなんだかどうでもよくなってしまった。

事前に「クレープのマミ」はアイドル映画らしいという話を聞いて、あんまり期待はしてなかったんだが、見た後で思った。

「この役やれるのってゆうこりんしかいないわ。」