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アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

この本を読んでいて、限界効用とシンギュラリティの関係ということに思い至ってしまった。限界効用というのは要するに二個目の栗まんじゅうは一個目の栗まんじゅうほどうまくはないということなんだが、この本でも、それが成り立っていて、加速が次第に進んでいく第二章、第三章よりも、まだ現代と完全に断絶していない、変わりゆく世界を、著者お得意のジャゴーンを詰め込んで描いた第一章の方が面白かったと思う。ストロスにはエシャトンシリーズのようなアクション要素を期待しただけに、ストーリーの面でもやや不満が残る。

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両親を殺された少年の復讐譚と言ってしまうと簡単なんだが、やはり、本書のキモは気球世界という設定。宇宙に浮かぶ風船の中に、輝く幾多の太陽と浮かぶ島々。太陽の照らす僅かな領域に住む人々、飛び交う戦艦、冬空間にそびえる氷晶。それらの世界歓を少年の成長と共に丁寧に描き、スチームパンクスペースオペラという無茶をやらかした珍しい作品である。技術コンサルタントである著者が綿密に設定した世界を科学的にいろいろと検討してもいいんだが、気にしないでこの世界観にどっぷりはまった方がいいだろう。最後にジブリっぽいとか思ったら負けだ。